Round-trip letter of Tokyo and Hokkaido

東京のオトコと北海道のオンナ、その離れた距離で行われる往復書簡。

思い出を置き去りにして

実家からそう遠くないところにたくさんゴルフ場があるということを知ったのは、実際に自分がゴルフをやり始めたら。先週末も2週連続でいつもの仲良しメンバーでゴルフ。途中豪雨に見まわれ、天候に恵まれたゴルフとは言えなかったけれど、スコアも悪くなかったこともあり満喫。

帰り道、ふとカーナビをみるとかつて通った中学校の名前が。なんとなく懐かしくて脇道にそれて向かってみた。

学校へ向かう道中の道は狭かった。こんなにも込み入った場所だったのか。中学校をみたのは何年ぶりだろう。部外者なので柵の外から眺めるしかなかったけれど、「ああ、懐かしい」という思う部分もあれば、見慣れない建物もあったりして。そして何より驚いたの学校までの道幅の狭さ。車一台すれ違うのにも少々気を使うほど。それでも懐かしい校舎やグラウンドをみると、当時サッカー部でシュート練習中防護ネットを超えて、近隣民家のガラスを割ったよなぁなんて思い出が宿った。当時はまだベビーブームの余波+新興住宅地ができて生徒数が増えた時期だったのか、第二グラウンドなるものもあったが、そのあたりはもはや跡形もなく。民家がポツポツと立ち並んでいた。

そして複雑な心境だった。それは必ずしも記憶との相違という意味で複雑だったというわけではない。今現状のもがき苦しむ未来など想像していなかった当時の自分。あれから何年も経った今、当時の自分にアドバイスできるとしたら何と言うだろう…。純粋無垢で人や物事を疑ったり憎しみをもったりせず、今に思えば信じられないほどお人好しで自己主張しなさすぎな自分が到達した2014年。特にこの10年、何をしてきたのだろうと悲しくなった。
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中学校を後にし、駅前からかつて住んでいた自宅付近まで自らの運転する車で走ってみた。こんな近い距離だったのかと距離感覚がおかしい。子供時代にに自転車で通った道のりのイメージでは、もっともっと長い距離だったのに。車だとアクセルひと踏みというくらいの感覚。すでにバイパスが作られ交通量の激減したかつてのメイン道路の町並みは寂しかった。子供の姿もなく、閑散としていたのだ。ところどころ記憶に残っている建物やお店も存在するが、違和感を拭えなかった。

そのまま幼少時代を過ごした実家があった場所へ向かう。見慣れているはずなのに、思い出の風景とは異質な空気を感じつつ、ご近所さんだった表札をみると懐かしい感じもあって。半分くらいの建物が建て替わっていただろうか。毎日のように自転車で友人と遊んだその場所をみて、なんとも言えない気持ちになった。かつてはブランコや鉄棒のあった公園は寂れ、サビの目立つ鉄の塊がわずかに確認できるだけ。覆っていた柵もボロボロ。

毎日のように遊んでいた友人の家も当時のままの形はかろうじて維持しているが経年劣化をはっきりを感じる作り、もしくは数年前にリフォームしたかのような家、住人が入れ替わったであろう全く違った形の見知らぬ表札の家もあり年月の経過を痛感した。既に10年以上前に手放したが、父がこだわりをもって設計し建てた家は、売却後しばらくはそのまま住んでいたようであったが、昨日見た家は効率だけを求めたような面白みもない安っぽい平凡な2階建ての家に建て替わっていた。正直、じっと見ることができず「アッ」と思って目を逸らしてしまった。

広い芝生の庭でキャッチボールやサッカーをしたり、ゴルフの真似事をしたり。当時飼っていた愛犬を思い出したり。健在だった北海道の爺さんが植樹をしてくれたあの家がなくなっていた。冷静に考えて築年数を考えたら仕方がないだろう。そもそも既に手放した土地だし。それでも複雑な心境に見舞われた。「ああ、見なければよかったかもしれない」そう思った。

少し前に友人と話した時に。夢にでてくる風景って子供時代に過ごした風景なんだよなあ、と話していて。彼女はピンとこなかったようだが、自分にとってはまさにそれが今では建て替えられていると知ったあの場所、あの家だった。かつては新興住宅地であった場所もいまや昔。1世代進んだ感もある。当時できたばかりの小学校は回りに何もないポツンと孤立した感じだったが、いまやこんな住宅地の中に小学校か!というくらいまわりには家が立ち並んでいる。

しんみりとした感情を抱きつつ現在の実家へ向かった。道中、ここに友人が住んでいたよな、良くここで遊んだな…そんなことを思い出しながら。行こうと思えばいつでも行ける距離だったのに、なぜか行かなかった。特に理由があったわけではない。行く理由がなかった。

キラキラした記憶とリアルな現実。賑わっていた通学路が寂れてしたのも衝撃だし、駅は建て替わっていて当時の面影はなかった。

総じてとんでもなく田舎に感じてしまった。閉鎖感。毎日学校にいくのが楽しかった当時を思い出したが、それでも都会を知ってしまった今や、もはやあの場所にもどることはないだろう。それでも思い出の中でずっと生き続ける。